Ⅰ 初めての法律相談:基礎知識の補充ページ
補充ページでは、法律相談に行くことを考え始めた方を念頭において、以下の事項についてご説明致します。
(2)警察への対応につき確認しておくべきこと
ア 警察への連絡~届け出、交通事故証明書の発行、
素人考えで示談しない~
イ 人身事故としての届出~ポイント~
ウ 出来れば実況見分調書の作成には立ち会っておくべき
エ 警察からの質問のうち加害者の処罰についての被害者の意見をどうするか
(2)警察への対応につき確認しておくべきこと
ア 警察への連絡~届け出、交通事故証明書の発行、素人考えで示談しない~
① 事故の報告
交通事故が発生したら、まずは110番通報して警察署に事故の報告をして下さい。
道路交通法72条には、「事故現場から最寄りの警察署(派出所または駐在所を含む)の警察官」に事故の報告をしなければならない、と定められています。
② 素人考えで示談書を取り交わさない
そして、決して事故の加害者との直接の話合いだけで示談・解決とすることは考えない方がよいと思われます。
当事者同士で取り交わした示談の失敗例としては、「後日、後遺障害の残存が発覚した場合、本来補償を受けられるはずの権利を素人考えで作った和解書によって放棄してしまっている」例をみたことがあります。
警察への報告はしないという内容の示談書も交わすべきではありません。
③ 交通事故証明書を取得しておくと、相談がスムーズに
警察署へ事故の届出を行うことで、自動車安全運転センターから「交通事故証明書」が発行され、この証明書が保険会社への損害賠償請求や裁判の際に必要となります。
交通事故証明書の取得は、加害車両の保険会社が進めるのが通常ですが、警察署備え付けの申請用紙に必要事項を記載し、540円の郵便振替をすることによっても取得することができます。行政書士や弁護士事務所などへ相談に行く時に、事故証明を持参しておけば相談がスムーズになるはずです。
イ 人身事故としての届出~ポイント~
①届出をしないと実況見分が実施されず、重要な証拠が残らない
ポイントとしては、少しでも身体に異変を感じていれば「人身事故」として届け出ておくべきことを指摘できます。
人身事故としての届出をしておかないと、通常、「実況見分」が実施されず、「物件事故報告書」という簡易な報告書の作成のみで警察の捜査が終了してしまうため、後々、事故状況について争いが生じたときに重要な証拠資料が欠けてしまうことになりかねないのです。
また、人身事故としての届出がないと保険会社との間で治療費の支払いを巡る争いも生じかねません。
②マンガⅢ~並木所長のやさしさがあだとなる~
マンガⅢの登場人物である並木所長のモデルとなった方は、
「相手も若い子だから経歴に傷をつけたくない。礼儀正しく謝ってくれたから大事としたくない。」
というおやさしい気持ちから人身事故としての届出をしなかったそうです。
そのやさしさがどの様に仇となってしまったかはマンガⅢをご参照下さい。
「いたずらに若い青年の経歴を傷つけなくてもいいじゃないか。。。。。」
→間違いのもとでした・・・・
※人身事故としての届出があれば、自動車運転過失傷害罪(刑法211条2項)なり危険運転致死傷罪(刑法208条の2)といった「犯罪」があったと警察に認識されるので、次に述べる実況見分が行われるのです。
※犯罪捜査規範104条1項:「犯罪」の現場その他の場所、身体又は物について事実発見のため必要があるときは、実況見分を行わなければならない。
ウ 出来れば実況見分調書の作成には立ち会っておくべき
人身事故としての届出がなされる(厳密には診断書の追加提出があって初めて正式に受理扱いとなる)と、交通捜査係の警察官は、加害者の刑事処分の判断資料を作成するため、事故がどの様な状況で発生したか確認する実況見分を実施し、結果を調書にまとめます。
実況見分には、「関係者」の立会を得て行うと定められているのですが、実際上、加害車両の運転者のみが立ち会って書類が作成されることが多く、ブレーキをかけた位置であるとか被害者を発見した位置等について、被害者の認識と食い違う書類が作成されてしまうことが多いです。
実況見分調書は、刑事裁判で使われる証拠になるのですが、民事裁判でも過失割合(事故発生に当事者双方がどの程度寄与したのか)を判断するうえで重要な資料の一つとなります。
ところが、被害者の認識と食い違う内容が実況見分調書に記載されていると覆すのに一苦労することも起こります。
加害車両の運転手は、自分の責任を少しでも軽くしたいという心理が働きがちなので、後日、被害者が読むと憤慨するような実況見分調書が出来上がることもあるのです。
※犯罪捜査規範104条2項:実況見分は、居住者、管理者その他「関係者」の立会を得て行い、その結果を実況見分調書に正確に記載しておかなければならない。
※実況見分は、主に警察署の交通捜査係が担当するのですが、交通捜査係が数人単位で構成される地域も多く、実施時期は人手の問題で前後するようです。
事故の状況について、警察官に適切な記録を残してもらうためにも、交通事故の被害者は、出来れば実況見分調書の作成には立ち会っておいて、その認識を警察に伝えておくべきなのです。
なお、実況見分が実施される時期は、法律の定めはないものの、概ね事故発生から1週間から1か月前後で実施されるようです。
エ 警察からの質問のうち加害者の処罰についての被害者の意見をどうするか
交通事故の被害に遭うと、警察官から「加害車両の運転手の処罰について」、
ⅰ 厳重処罰にして欲しいのか
ⅱ 被害者として加害者の処罰を望まないのか
ⅲ 警察にお任せするのか
と、意見を問われます。
この質問にどう答えたら良いのか、もちろん決まりはありません。
被害者の意見が伝えられた後、最終的に加害者の処分を決める検察官は、被害者の意見を判断材料の一つにします。
刑事処分が終了して、いざ民事裁判で事故状況が争われたときには・・・
①加害者に刑事罰を加えられた場合
→後日、被害者には、実況見分調書のみならず、目撃者や加害者の事故直後の供述調書などの刑事記録一式が開示されるのが一般的です。
②加害者が不起訴処分となって刑事罰が加えられなかった場合
→後日、被害者には、実況見分調書のみが開示されるのが一般的です。
③人身事故として届出がなく実況見分も実施されなかった場合
→せいぜい物件事故報告書という簡易な報告書しか警察に残されないので、民事裁判で事故状況に争いが生じたときに苦労することがあります。